おまけ

小理佐の不思議な夢

ブーツを履いた理佐トップへ





元はといえば、川辺さんに「旅行に連れて行ってあげる」と誘われて、
着いてみたら、あんまうっその司会役…
でもみんな、楽しんでもらえたみたいで、よかったです。
(ただ、観客の皆さんの異常な盛り上がりは…ちょっとパスですぅ)

それに、可愛い第一王女様のお服も着る事が出来たし…
あ、もちろん借り物ですよぉ…黒理佐さんからの。
黒理佐さんって、ここに別荘があるんです♪
川辺さん曰く「住居家宅侵入」もしくは「遺跡等文化財保護条例違反」らしいですけど…
その別荘で一泊し、打ち上げをする事になりました。

黒理佐さんの別荘は廃墟をそのまま改造したらしく、その手のお好きな方には堪らない建物だと思います。
あっちこっちから子供さんの呻き声や泣き声、女の人の悲鳴、
兵隊さんらしい人の怒号や断末魔みたいなのも聞こえてきます。
「すごい演出ですねえ」って黒理佐さんに言ったら、
「ん? 何も細工なんかしてないわよ♪ キャハハ♪」と…
黒理佐さんと、交代で留守番をしているというドレイさん(ヘンな名前だなぁ)は、
そんな事は慣れているらしく、手際よく打ち上げの準備をしていきます。
…この時は、夕方の便の銀河鉄道で帰ればよかった…と思いました…。

やがて夜も更けて…あちこちで起こる怪奇現象も何のその。
梅酒をあおった川辺さんとハイテンションの黒理佐さん。
そして「今日は無礼講」と、ドレイさんたちも加わっての大宴会…。
わたしは…やっぱり怖い…未成年に平然と酒を勧めるオトナたちも怖い…
内緒ですけれど、一口だけ頂いて、先に休む事にしました…。
そうでもしないと、怖くて眠れそうもなかったからです…。

「黒理佐! てめぇ、人の居候先の住所で、勝手に会社登記なんかしやがったな! この悪徳商人め!」
「何よ! 叔父様ならともかく、居候の分際に言われる筋合いはないわよ! だいたい居候のくせに、家庭教師の真似事をして料金までふんだくっているあなたこそ、悪徳商人じゃない!」
二人がお酒も入ってとっても楽しそうに話している間、ドレイさんたちはカラオケの準備。
寝る前に一曲歌えという事で、第一王女様の姿で、『聖少女領域』を披露…

…こんなに賑やかなのに…なんだか寂しい…
あ…でも、眠くなってきた…
早く夜が明けないかなあ…

そう思ううちに、眠りへと落ちていきました…。




「しくしく…」
子供の泣き声がしました…それも一人や二人じゃない、大勢の…
「え?」 気がつくと、そこにはとっても可愛い、でも、恐ろしく青ざめた顔の子供たち…
男の子も女の子も、みんなレースやフリルやリボンの付いた可愛い服を着て、男の子はズボン、女の子はひらひらのスカート。
そして足もとはみんな、ピカピカのロングブーツ、手袋…
「…ひぃ…出ちゃったの…わたし、怪奇現象は好きだけど、ホンモノの怪奇現象は嫌いなんだよぉ…」
自分でも訳の分からない本音が出ちゃいました…
「怖いよぉ…」「痛いよぉ…」「助けてぇ…」
すすり泣きながら助けを呼ぶ声が…だんだん多くなり、わたしの回りを埋め尽くしていきます…

「あ〜ん、ナムアミなんとか〜…早いところ、夜が明けてちょうだい〜…あれ? こっちはナムアミじゃ効かないか…え〜と…ア〜メン 主よ、哀れなヤツめ…あ、全然違う…ダメだあ…シスター先生、ヘルプ〜…」

でも…なんだか急に、泣いている子供たちの事が、哀れに、そして愛しく思えてきたんです…私に何か危害を加えようという訳じゃ無さそうだし、それより、私に助けを呼んでいるの…ね…?
勇気を出して、泣きじゃくった果てに、ヒクヒクとしている、ちっちゃな女の子の前で膝をつきました。とっても上品な、レース襟のワンピースにヘッドドレス…赤いエナメルの編み上げロングブーツ…お人形さんみたいな出で立ちの幼い女の子の、ちっちゃな身体をぎゅっと抱きしめた…

(これでお顔を上げたら、救出が1時間遅れた赤ずきんちゃんみたいなのだったら…ひ〜!)

正直そう思いましたが…それでもいい…この子は私に助けを呼んでいるんだ…そう思い、更にぎゅっと抱きしめました。
女の子は泣き止み…うつむいた頭を、ゆっくりと持ち上げました…。ヘッドドレスの下から覗くお顔は…半ゲル状かなぁ…と思いきや…

なんて可愛らしい…涙を一杯に溜めた大きなお目々に、まだちっちゃいけど高いお鼻、メープルシロップよりも甘くて澄んでいそうな唇…
顔色は恐怖と悲しみで蒼ざめているけれど、とっても可愛い幼な子…

「泣かないで…もう大丈夫だよぉ〜。 お姉ちゃん、あなたの味方ですよぉ〜♪」
それでも女の子の表情から、恐怖とパニックの表情は消えない…
「やっほ〜♪ べろべろ〜♪ おバカさん♪ 乳酸菌とってるぅ?…♪」
無駄だった…この辺は「ローゼンメイデン」は、放送エリア外だったらしい…

何も出来ないの? 私…目の前に、こんなに悲しんでいる子供がいるのに…
何もしてあげられない悲しさ…生まれて初めて感じるような、とっても悲しい気持ち…
「愛する人に何もしてあげられない時、なんとも言えないやるせなさを感じるよねえ…」
誰かがそういう事を言ってたけれど、これがそうなのかな…

それにしても、こんなに幼い子が…こんなに悲しい目に?
そしてそれって、死んだ後も、延々と続けなきゃいけないことなの?
そう思うと…急にに悲しくなってきました

「ごめんね…」
涙が一粒、じめじめとした地面へと落ち、染み込んでいきました…。

すると…信じられない…といった表情をした女の子が、次に口にした言葉は…

「お…う…じょ…さ……ま………?」

…え? 何? 王女様って…
あ、そうか…今は「第一王女」のお服を着ているから…勘違いしているのかなぁ?
これはね、コスプレなのよ…なんて言っても通じそうもないしなあ…そんなことを思っていると…
なんと…私の周りで啜り泣きをしていた男の子たちも、女の子たちも、みんなこちらに、ゆっくりと歩み寄ってくるじゃありませんか…
(ひぃ〜…こんなにいっぺんに、お相手するのは物理的不可能で〜す。『アルバイト急募!』って感じですぅ…)

みんな可愛い顔立ちの子供たち…こんなにみんな可愛かったのに…そうか…みんな殺されちゃったのね…
可愛そうに…ごめんね、ごめんね。私のせいでもなんでもないけど、でも、ごめんね…
「王女さま…!」
「おうじょしゃま…」
「リーサさま?」
「王女さまが…リーサさまが帰ってきたの…?」
「ちょっと違うけど…でも、ほら! リーサさまとおんなじ、とっても優しい匂い…」
みんなすがりついてくる…身体が冷たい…でも…

「いえ…あ、あたしぃ、現実世界の宮城県仙台市から参りました、川辺小理佐と申しま〜す♪」 …なんて言えないよお…
だって、みんな私にすがるように、恐怖と悲しみに満ちていたお顔に、安堵と微笑みの表情を浮かべているんだもん…
「王女さま!」「おかえりなさ〜い!」「わ〜い! 王女さまが帰ってきた〜♪」

「王女さまが…」という声がした…
すると…げげ!
私を取り巻いている子供たちの外側に、さらに人の輪…って言うか、人だった幽霊の輪…
詰襟の軍服を着込み、サーベルを下げた大人の男の人たち…
純白のレースフリルのミニ丈ドレスに黒い手袋とブーツ…大人の女の人たち…?

ちょっと〜…川辺さん、黒理佐さん…このへんで肝試しはお開きって事で…ひ〜…
すっごく危険な状況です…へるぷ…
それではこの辺で、幽霊大量出没現場からの実況を…終わりたいですぅ…

右側に女の人たち、左側に男の人たち…
その間から、なんとも威厳のあるじーさまが、こちらに近づいてくる…
他の男の人たちより沢山モールや勲章が付いた軍服…膝の上まである、遊び好きのお姉さんが履きそうなスーパーロングブーツ…
軍帽に立派な白い羽飾り…これは紛れもない…RPGなら、少なくとも中ボス位の将軍様或いは元帥様です…
HP5万、MP無限と見た…おまけに蘇生呪文アリ…「サイレス」か「マホトーン」必須…。
マントを翻して近寄ってきた威厳は、よく手入れされたお髭も誇らしげに、鋭い目でこちらを…

「あ、すみませ〜ん! 間違えました〜! すぐ出て行きますんで…」という言葉を準備していると…
威厳の塊は、私の前で立膝をつき、肱まである手袋を嵌めた右手を頭にやり、軍帽をとって頭をたれ…
少しだけ顔をあげると…さっきまでの鋭い目とは全然違う、なんとも言えない、優しい目…

「おかえり…リーサの……いえ………お帰りなさいませ。第一王女、リーサ様の血を引くお嬢様…」

「リーサ様のお嬢様?」
「よくぞご無事で!」
「ああ…お会いしたかったです…お嬢様…」
「リーサ様以外の王室の方は皆死に絶え…と言う事は、リーサ様は今、王室初の女王陛下に!」
「そしてお嬢様は…今、第一王女様!」
男の人も、女の人も、涙を流しながら、笑っている…安堵している…?
そして、子供たちも…安心しきった顔で、微笑みかけている…
「近衛大隊 整列!」
さっきまで死んだような表情だった(と言うか、死んでいるんだけど)兵隊さんが、凛々しく隊列を整える…
ピカピカのロングブーツの踵を打ちつけ、
「我が栄光あるロングブーツ優等人類帝國 第一王女殿に 敬礼!」
あれ…なんて生き生きとした…死んでるのに生き生きとしてるよぉ…?????

あ、いえ〜…私、その…私の名前は…かわべ・こりさですぅ…って言ってるつもりなんだけど、声が出ない…

「何も仰らなくても、皆、分かっております」威厳の塊が口を開いた…
「貴方様は確かに、我が誇りある帝國の第一王女、リーサ様の血を引くお方…」…
「……?」
「ああ…今となっては、リーサ様御一家だけが、我が帝國の最後の希望…」
「…(え〜とっすね〜…ダメだ…声が出ない…)」
「ああ、呪われた我が帝國の、最後の血筋…それが…こんなに愛らしく、そして優しい心を持った少女に…」
「…(…確かに私は、不思議なご縁で、孤児院にいた所を今のお父さんとお母さんに引き取られたんだけれど…)」
「我々優等人類が失ってしまい、そして滅んでいった遠い要因…優しい心を…お持ちでいらっしゃる!」
「……(ここはおとなしくしていたほうが、無難…)」
「ああ…なんとありがたい…感無量ですぞ…リーサ様…うっ…」
「(わ、じーさん泣いてる…なんだか川辺さんがよくやる『うっうっ…』みたい)…」

誰ともなく、歌を歌いだした…
なんとも荘厳…でも、どこか洒落て洗練された、そして気品と勇気が溢れる曲…
いつしか、廃墟だった周囲は、美しい街並みに変わり…石造りの端正な建物が立ち並び…
その凝ったデザインのガラスで出来た窓辺には、色とりどりの可憐な花が飾られ…
石畳が敷き詰められた広い道…それが何本も集って出来た円形の広場…
その真ん中には噴水…いつしか勢ぞろいした、軍楽隊…
馬…そして、馬車の列…その傍らには、燕尾の乗馬服で正装した御者が、帽子を取り礼をしている…
それらは瀟洒なデザインの街路灯に、真昼のように照らし出され…
宇宙一気高く美しい都…それが今、目の前に…

「第一王女であられるコリサ様。どうぞこちらへ…」

いつの間にか、馬車に乗っていた…
四頭の俊足そうな白馬が引く、黒塗りの馬車…
前の席には、軍服姿も凛々しい、王女親衛の美少女が二人…
後ろの席には私と、威厳の塊が、私の後見人よろしく…やっぱりこのじーさん、相当偉いみたいだなぁ…

石畳の道の上を、なめらかに走る馬車…
両側の歩道には、着飾った帝國の老若男女…そしてその後ろに立ち並ぶ石造りの建物の窓辺にも、人、人、人…
軍服や乗馬服で正装した男たち…純白のドレスに漆黒の手袋とブーツで正装した女たち…
みんな手を振る…私も、それに応える…手を振って応えるたびに、歓声が沸きあがる…
その合間を、何色もの風船を持った子供たちが駆け抜ける…はしゃぎながら、笑いながら…
ワインの樽を開ける音…『乾杯』の声…肉料理のいい匂い…今日はお祭りなんだ…きっと…
私がここに来たからかな…それなら嬉しい…みんあ喜んでくれている…それなら、来てよかった…

夜空に花火が上がる…馬車の上からそれを見る…なんてキレイなの…
馬車のパレードの終点は、さっきの噴水広場…
そこにはすっかり宴の準備が整い…見たこともないくらいの沢山の人たちが、到着を待っていた…
「乾杯」「乾杯」「乾杯」…笑い声に溢れる…
みんな本当に楽しそう…こんなに華やかな宴、見たことない…
目の前には食べきれないご馳走…それに手をつける暇もないほどの、乾杯の連続…

疲れなどまるで知らないように、はしゃぎまわる子供たち…
グラスを片手に、お喋りと笑い声が尽きない女の人たち…みんな美人さんだなあ…
興も乗り、一角ではフェンシングの試合が始まった…応援する男たちから歓声が上がる

何時間、こうして過ごしただろう…

私は…ご馳走を頂きながら、いろんな人と、いろんなお喋り…

ふふ…もうお腹一杯…
なんだか眠くなってきちゃった…

宴はまだまだ続いているけど…
うん…私はまだ中学生だから…おやすみなさい…

……………


……………


「おい…」
「おい…」

誰か、私を呼んでるの?

「おい、起きなよ…小理佐ちゃん…列車が出ちゃうよ…!」


気がつくと、そこはやっぱり、黒理佐さんの廃墟改造別荘…

川辺さんが、いそいそと帰りの準備をしていた…

「ねぼすけさんだね。意外と。一番早く寝たのに…?」
「だって、疲れちゃってたから…はい…あれえ、黒理佐さんは?」
「あの悪徳商人なら、墓地へ行ったよ。あんまりアレが出すぎるから、墓参りにでも行ったんだろ?」
「…」
「もっとも…小理佐ちゃんが寝てしばらくしたら、急に心霊現象おさまったけどね…」
「!」
「まあ、あのドレイさんたちのカラオケ攻撃で、悪霊も退散したか…ありゃあ、ウルサいもんね…」

王女服が汚れないように気を使いながら、墓地へ急ぐと、黒理佐さんとドレイさんたちは、昨夜のカラオケ大会の疲れも見せず、
ピンピンした表情で、普通のとは少し形が違う十字架の並んだ前で掃除をし、お花を上げていました…

「お、ねぼすけ。来たな。」
「え…でもまだ、夜が明けてからそんなに経ってないんじゃ…」
「何時間寝てるんだよ。こっちなんか、30分睡眠で、ほれこの通り、ピンピンさ♪」
「(この人たちのバイタリティって、いったい…) そうそう、私にも、お手伝いをさせてください♪」
「ん…じゃあ、そこに摘んである、お花をあげてくれよ…」
黒理佐さんは、なぜかニヤッとした表情をしながら、アゴで指し示しました。

お花を何本かづつ、なるべく違う色を混ぜて、お墓の前に置いていく…
廃墟のわりに、意外に墓地が荒れていないのは、ドレイさんたちが、いつもちゃんと掃除をしているからなのだそうだ…
「ドレイさんって偉いんですね。亡くなった方々を、ちゃんとお弔いするなんて…」
「なあに、こうしとかないと、ただでさえ騒々しいでしょ? これ位しとかないと、祟られまくっちゃうしね〜?」
「(さあ、お花ですよ…せめてもの、貴方たちへのお礼…)」
「…今日は随分、あたりの空気がすがすがしいねえ…まるで墓標が、喜んでいるようでさあ…小理佐お嬢さん…」

いつのまにか、後ろには黒理佐さんが立っていた…
そして、気のせいか、こう呟いたような…
「よかったな、みんな…よかった…ですね……様…」


慌しく着替えをして、朝食もそこそこに、駅へと急ぐ…発車は8時15分…十分間に合う…
…と思ったら、なんだか黒山の人だかり…昨日のバイトのサクラ観衆の皆さんと、
ホームに停車中の、7時43分発予定のモーリオ行き下り普通列車…
バイト料をもらってこれからイーハトーブの星祭りに行くらしいんだけど…みんな鈍行専用の青春きっぷしかもっていないらしく、
4両編成の普通列車は、もうすし詰め…遅れたときの仙山線…なんて比じゃない…
「もっと詰めてよ〜!」
「ほら〜、乗れないじゃないかよ〜」
「ど〜すんだよ〜、星祭りに間に合わね〜よ〜」
「へへ。乗れた乗れた! 車掌さ〜ん、ドア閉めちゃって〜」
「あ、コノヤロ! おまえだけずるいぞ! この前学食でおごってやったコロッケカレーの代金返せ!」
ホーム端の喫煙所では、何人かの人が「ダメだこりゃ」って感じで、まずそうにタバコをふかしている…
車内では先客の、行商に行くらしい御婆ちゃんや、出張に行くらしい背広姿の人が、何が起こったんだとビックリしたような表情…
私と同じ中学生位の、可愛い制服を着た女の子はキョトンとした顔…きっと学校に着いたら、この話で大盛り上がりだ…♪
それはそうだよね…普段は殆ど、人の乗り降りがない駅だから…

…さっきまでの爽やかな感動はどこへやら…銀河鉄道って、こんなに生活感溢れる乗り物だったのね…♪
なんて微笑ましい…でも、どこか爽やかで、清清しい…
なんだか、おかしくなっちゃう…
笑っちゃう…
こうやって、また新しい一日が、始まっていく…

そう…私は、生きている…♪

すったもんだの挙句…
…結局、車掌さんが宇宙無線で鉄道管理局に連絡し、次の快速列車を臨時停車させる事で積み残し客をしぶしぶ納得させ、
乗客満載のモーリオ行き普通列車は20分近く遅れて、8時過ぎにのっそりと、ようやく出発して行った…

おかげで、上り列車も少し到着が遅れるらしい…
プラットホームで朝の風に吹かれながら、昨夜見た「夢」のことを話す…
川辺さんは「小理佐ちゃん、キッズステーションとアニマックスと深夜アニメの見過ぎ!」と言うし、
黒理佐さんに至っては、「ぢぐぢょ〜!そんなあたし好みの夢を見るなんて、ゆるぜない〜!」と、悔しがる事…

「小理佐ちゃんって、本当にリーサ姫の血を引いているのかもね…?」
「え〜、確かに私、孤児院の前に捨てられていたのを…でも…」
「あたしもあの服は何度も着てるのに…なんであたしは王女様の夢を見ないんだ〜?
 このロングブーツ優等人類帝國の血を引いているはずの、この私が…」
「川辺さんも、末裔なんでしょ?」
「公称はね♪ ギミックってヤツ♪ それに、私は『偽装少女』だし♪
 でも、小理佐ちゃんは…本当かも…?」
「ぢぎぢょ〜、あたしも血を引いているはずなのにい〜???」
そこで川辺さんが、よせばいいのに
「ま〜、『天空の城ラピュタ』で言えば、小理佐ちゃんは、正統の血を引く『シータ』、
 黒理佐は邪道の血を引く『ムスカ大佐』ってところかな」なんて言うものだから、黒理佐さん激怒…

「し〜た〜!」
「ぱじゅ〜〜!」
「ボクにも教えて…滅びの言葉♪」
「滅びの言葉はね…あ〜、言えない。飛行石に聞かれちゃったら、今、この場でドカンなの♪」
「け、使えね〜言葉だぜ♪」
「じゃあね…!…『ば』と『る』と『す』よ♪」
「わかった…『ばとるとす』だね♪」
「違うわよ! 『ばるす』よ! 『ば る す !』」
飛行石「へっへっへ…♪ 今なんと仰いましたにゅ?」
二人「あわわわわあわあわあああわわああわわ…」
「見ろ〜 ゴミが人のようだぁ〜 ハッハッハ…」なんてムスカごっこをしているうちに、
上り急行「イーハトーブ2号」が到着…座席指定が取れたので、帰りはちゃんと座って帰れそうだ…♪
お留守番のドレイさんと、積み残しで次の快速待ちの皆さんがホームで手を振る…
軽い衝撃とともに列車は動き出す…滑るように…軽やかに…
元気のいい何人かは、ホームの端まで、手を振りながら走り出す…
手を振る姿がどんどん小さく…列車は本線へと戻るべく、高度を徐々に上げていく…
着いた時はあんなに陰惨で、いじけた森と、ボロボロの廃墟が並ぶ場所だったのに…
今は朝の光を浴びて、こんなにすがすがしく…

…!
墓地の辺りで、沢山の人たちが手を振っている…????
あの正装した姿で…子供たち…女の人たち…そして男の人たち…
威厳の塊のじーさまも…???
「さようならー…」
「王女さま、お元気でー…」
窓を下ろして、大きく手を振る…
みんな…ありがとう…
きっと…リーサさんもこうして、置いていく沢山の想い出たちに、手を振っていたのかなあ…
懸命に手を振る私…
それに応えるみんな…
その間にも、列車はぐんぐんと力強く加速し、左へ左へと大きく孤を描きながら、
遥か上空を通過する本線への連絡線上を、見る見るうちに高度を上げていく…
廃墟も、墓地も、森も、草原も…一つの大地になり、その大地はどんどん小さくなり、やがて点になり、見えなくなっていく…

川辺さんには「ここへは、もうしばらく来たくない…」って言った…。
ここに来ると、きっと、自分が甘えちゃうからかもしれない…そう思ったからかもしれない…
川辺さんは、「そうだね…」と静かに答えた…
「それに、ここは黒理佐の不法占拠型スラム式豪華別荘があるからなあ♪ へっへっへにゅ〜♪」
「何だと〜! この悪徳家庭教師兼おちゃらけ不良学生め!」
「よ〜し、やるかぁ〜!」
「望むところだ!」
そう言いながら二人は、スパゲティの早食い勝負の為に、食堂車へと消えていった…

ふふふ♪
あとで様子を見に行っちゃおうかな♪

「次の停車駅は西十字星、西十字星です。西十字星の次は、小鳥の丘に停まります…」

本線に戻り、快走する急行列車…
時空を超え…果てしない銀河の海を…
やっと、仙台に帰れる…
…学校サボっちゃってたけど、大丈夫かなあ…




追記


後日…お留守番のドレイさんからお手紙が届いた。
あれから、黒理佐さんの別荘には、夜な夜な亡霊たちが,
「王女様ばんざーい! と、行進して歩き回り…
「わしの娘の子孫とした事が何たる体たらく。少しは第一王女様を見習え〜!」
という謎の言葉を吐くじーさんユーレイが、『ユーレイホイホイ』を踏み潰しながら徘徊しているらしいです…♪







向こうから、帝國軍の行進の列が…

ぜんた〜い、止まれ!


この帝國の正統なる継承者であり、
心優しき、慈愛と平和の使者であらせらるる、
第一王女 コリサ殿並びに、
その素晴らしい御家族、御友人方、
そして、それを影から支え給う
このサイトの御客人の方々に…

敬礼〜!




司会進行時の小理佐ちゃん  
お疲れ様でした♪






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