死のルーレット


レースやフリル、リボンなどがあしらわれた、なんとも可愛らしいお服…
ペチコートやパニエで膨らませたスカートの捲れた部分から覗くドロワーズや
ガーターベルトで吊られたストッキングのつけねのレース模様…
両手に嵌められた手袋と、両足の膝から下をぴっちりと包み込むロングブーツが、
その全身に浴びた光を反射させ、輝きを放っています…
そんなファッションに身を固めた美しい少女たちが四人、
静かに、花の咲く地面に横たわっています…
ヘッドドレスを着けた頭の、こめかみからは、高貴で優等な血と、
高い知能を誇った、脳みその破片…
その愛らしい顔には、恐怖と、絶望と、苦痛から解放されたような、
むしろ満足げな、純真無垢な微笑みを湛え…
…その傍らには、ピストルを手にしたお嬢様…

…お嬢様? !!!???
「ああ…これはどうした事…
ああ! この方達は、みんなお嬢様のお友達!
皆さん誇り高き名族のお嬢様達ばかり…何という事を…
お嬢様! これは…説明してくださいませ!!!」

「そう怒るな…」
「でもでも…これは…一大事でございますよ!
もう! お嬢様、そのピストルをお貸しなさい。全部私がやった事にして、
私はここで責任を取って自決したと言う事で、万事丸く…」
「違うわ! これはね、私たちの遊びなの…♪」
「遊びって…皆さん、死んじゃっているのですよ!!」
「遊びなの♪ ねえ、ロシアン・ルーレットって知ってる?」
「…遠い世界で、昔あった、人間の度胸試しをするっていう、あの…?」
「そう。私たちは、それを改良した優等人類ルーレットをしていたの」
「お嬢様、とうとう気が変に…これも私の責任、やっぱり自決します…」

「…お前、例の予言の事は憶えているな?
私たちは皆、もうすぐ私たちの世が終わる事を知っている…
この麗しい帝國とその文明、血統が絶えていく所を見たくは無いの…♪」
「だから、遊びと称して集団自決ですか? 酷すぎます…」
「違うのよ♪ 何とかしたいけれど、あの予言は必ず成就する…それは忍びない…
だからせめて、ルーレットで生き残った者が、この文明を継承する…
可能性はゼロに近い…見込みの無い、苦難だけを背負ってね♪」

「…でも、良かった…お嬢様がその生き残りに…?」
「いいえ、私はここで、敗者として潔く、散っていくのよ♪」
「何と…? だって、お嬢様は最後に残って…」
「いいえ♪ ロシアンルーレットは弾倉に一発だけ弾丸を入れる。
優等人類ルーレットは、一発を残してあとは全部、弾丸を入れる…
でも…今回は特別ルールで、五連の弾倉に五発の弾丸なの♪」

「それって…反則です。イカサマです。チョンボですぅ…
全員負けじゃないですかぁ…ただの集団自殺ですぅ…ウッウッ(泣)…」
「違います♪ 勝者は…あなたよ…リーサ♪」
「…! 私は革命なんか起こしませんし、何も望みません!
劣等人類の私に、ここまで良くしてくれたお嬢様を…」

「違います…リサ、あなたは、劣等人類ではありません」
「またぁ…この期に及んで悪い冗談! やっぱり全部私がやった事にして…」
「リサ…貴方は本当は、この帝國の、第一王女様なの…リーサ王女様。
王女様は亡くなった先の皇妃様の娘…その為、新しい皇妃様に邪魔にされ、
殺されかけた所を、私の父上に救われ…」
「……嘘だ…そんなの…こんな時の冗談は、冗談になりませんよぉ…」

「さあ、お行き下さいな♪ もうこの帝國は、長くありません。
伝えて下さい…この気高く誇り高き血を…
例えそれが、いかに罪深い、神に嫌われた血であろうと…
そうそう、これを履きなさい。」
そう言うと、ピカピカのロングブーツと手袋を差し出しました。
「これを履いて『黒の森』を走り抜ければ、
他の世界へとつながる乗り物に乗れるらしいわよ…♪」
それと、お前の小屋の中に、邪魔だから置かせてって言った箱があるでしょう。
その中のものも、もって行きなさい…

「じゃあね♪ さっさと行くのよ! お前!
グズグズしていると、他の劣等人類どもみたいに、長鞭でひっぱたくわよ!
…じゃあね…グスン…さようなら♪

そう言うと、お嬢様はこめかみに当てたピストルの引鉄を引き…
お嬢様の血、頭蓋骨、脳みそ…
美しく、気高いものが、砕け散っていく…
そして、お嬢様は、お友達の死体に寄り添うように、
花の咲く地面へと倒れ、動かなくなった…





どこか自分の死と滅びを弄ぶかのような、鬼気迫るような微笑を湛えた「お嬢様」。
この回りに、こめかみから血を流してたロリィタ服に手袋&ロングブーツ姿の美少女の死体を配し、最後に「お嬢様」が引き金を引き、血やを噴き出しながら倒れこんでいく…そのあたりが、この劇のエログロな退廃的芸術面での最大の見せ場であり、ストーリー上も、物語前半のクライマックスという所でしょうね…。

それを遠景で見てみたい…ですと?
…ムリな事言うんじゃない!
全部「ギミック」でやってる、こっちの立場にもなれよな…
そのうち、イラスト化してやるから、まぁ、待ってろ…

そうこうしているうち、物語は後半へ…
グッとファンタシックに、使命と運命の歯車が動き出す…?


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