予言
お嬢様はご退屈のご様子。
それはそうでございましょう…
優等人類の方たちは、生まれたときから何不自由なく、
可愛らしいお服も、奢りきった食べ物も、瀟洒なお家も、
退廃した快楽も…全てが手に入れてしまえるのですから…
「おい、お前」
「はい、何でございましょう? お嬢様」
「お前は…予言というものを信じるのか?」
「予言…未来を言い当てる、あれでございますか?」
「そう…昔から言われている予言…
「間もなく我々優等人類は、これまでの奢りと退廃の罰を受け、
跡形も無く、滅び去ってしまうそうな…」
「それは恐ろしい…また、なんと不吉で不謹慎な…
誰がそんな事を振りまいているので…」
「流浪の民どもよ」
「うーん…あれだけ虐げられて、まだ凝りもせず世迷言を…」
「いいえ、そのお話は、私も御婆様から聞いているわ」
「なんと…優等人類の人々にもその予言が…」
「…と言う事は、お前たちも知っているのね…♪」
一瞬、私の全身の血が、凍りつきました…
半ば優等人類への呪いの様な、あの予言…
「まあいいわぁ♪ やっぱりこの予言はこの地上の、
全ての人間に伝えられた、未来の約束…決まり事…」
「………」
「やがて現れる、一人の高貴な少女が、それまでの
奢り高ぶった文明を滅ぼす…って内容でしょ?」
「…………」
「そんなの怖くはないわぁ…
私は欲しいものは全部手に入れちゃったし、
好き放題、やりたい放題にやってきたから…でも…
この麗しき文明と血統が、絶えてしまうのは悲しいなぁ…」
そう言ってお嬢様は腰を下ろし、普段は決してお見せにならない
スカートに隠された部分もあらわに…
「さあ…御覧なさい…
罪深くも美しい、私たちの文明の粋を、その目に焼き付けなさい…
いつか蘇る、新たな罪深い文明のために…」
そう言うと、お嬢様は虚ろな目になり、
うんと遠くの方を見つめたまま、陶酔してしまいました…
私が男の子だったら、何をしていた事か…
お嬢様には、自分たちの文明の行く末が、
見えていたのかもしれません
私には、なんとも悲しそうなお嬢様に何もして差し上げる事も出来ず、
ただ、おそばにいる事だけしかできませんでした…
私がもう少し賢く、無知を憎む、聡明な存在であれば、
この後のお嬢様と私の運命も、
違う事になっていたのかもしません…
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||